土地の契約は小人ハウスで
ヘーベルハウスと契約した後は、土地の契約が待っていた。土地といえば数珠。ヤツに会わないといけない。やっつけヘーベルが数珠と私たちの間に入って日程の調整をしてくれるとの事だった。
ヘーベルハウスと契約をした1週間後にはちょうどリケ子の誕生日だった。家という一生ものの買い物。土地の契約も一生に一回しかないだろう。あまり記念日には興味がない私たちだったが、土地の契約日に迷わずリケ子の誕生日を選んだ。
契約当日。やっつけヘーベルから教えられた住所へ車で向かうと、三角の土地に建てられた小さな不動産屋が現れた。その建物は1階が駐車スペースになっており、2階が事務所だった。よく見るとその建物は公道ギリギリに建てられている。約束の時間の5分ほど前だったが、もちろん数珠はもう来ているようで、駐車場にはすでに愛車の改造プリウスが止まっていた。
車から降りるとどこからともなく数珠が登場した。
数珠「はいはい、こんにちは!この建物ですので、行きましょうか!」
よく見ると数珠の後ろには金色の時計を付けた、ガタイの良いチンピラ風の男が立っている。数珠が働く不動産屋の社長か?数珠みたいな変な男を雇うやつも、やっぱり怪しいヤツなんだな!!
数珠「あ、こちらですが、うちの新人でして!!今日は契約の取引を見学させていただきますからっ!!!」
そう言うとチンピラ風新人は無言で頭を下げた。名刺交換ももちろんないため、名前も一切分からない。そして一言も話さない。何なんだ、この新人・・・。見た目からして明らかに新人じゃないぞ・・・おっさんだ!!
不動産屋の入口は2階にあったため、階段で入り口へ向かう。階段もかなり狭かったが、入り口もかなり狭かった。というより天井が異常に低い。身長が190㎝ほどある数珠もチンピラ風新人も、背中を曲げなければ頭をぶつけてしまいそうだ。中に入るとこの天井の低さにも納得した。出てきた不動産屋の社長も営業担当も、白雪姫に出てくる小人のようだった。
この不動産屋もとい小人ハウスは、社長と営業担当の二人で経営しているようで、入り口から入るとすぐにお客さん用のテーブルがあり、その奥には所狭しと書類が重ねられていた。
入り口の目の前にある唯一の商談スペース(テーブル)に案内されると、召使い(営業担当)が近くのコンビニで購入してきたと思われる温かいペットボトル入りのお茶をくれた。
小人(不動産屋社長)と何かしらするのかと思いきや、目の前には数珠とチンピラ。(金の指輪がまぶしすぎるぜ!!)
数珠が小人ハウスを間借りして契約を進めるという状況。定型フォーマットを利用して作成された契約書にはチェックの付いているところとついていないところがある。それぞれ淡々と説明していく。
すると、書類に不備を発見した数珠
数珠「小人さん。書類間違ってるんですけど・・・」
小人「おいっ」
召使い「あれー?全部直したんだけどな・・・。」
数珠「小人さんのところの分だけ直ってないですね」
小人「あ、そうなの。別にうちはちょっと修正すればOKだよ。直さなくていいよー。」
リケ男(おいおい。適当だな。)
書類のちょっとしたミスを全く気にする様子がない適当な小人不動産。数珠経由じゃなかったら絶対関わることがなかった不動産屋だろう。
全ての説明が終わると捺印タイムが始まる。数か所に捺印すれば契約完了。契約書には取引の金額に応じて、印紙を貼り付ける必要がある。もちろん数珠が用意しているのだが、ちゃんとした入れ物ではなく、財布から出していた。
数珠「私、買っといたんで。これ領収書です。この金額分も加算されますからー!」
目の前に、その辺のコンビニで入手した収入印紙と領収書が。
取引は何とか終わったが、数珠のこの感じが何となく気に入らない。
手付金30万と印紙代を支払うリケ男とリケ子。あとは、土地代金支払い日に土地代金から30万円を引いた分を支払えばいいことになる。
数珠「リケ男さんリケ子さん。この度はご契約ありがとうございます!!あなたたちラッキーですよ。」
リケ男(はっ?何がラッキーなんだよ??)
数珠「通常であれば、都市ガスの引き込みと水道の引き込みをリケ男さんが払わないといけないんですっ!!でも、今回は小人不動産の方で負担してくれるって言ってるんです。とってもお得ですよ。これだけで数十万円は浮きますからっ!!」
意外とサービスしてくれる小人不動産。
召使い「いやー、土地の代金ミスっちゃったんですよ・・・。本当はこの値段で売り出す予定だったんです。」
そこには購入金額と比べて約100万円上乗せされた金額が書かれていた。
小人「数珠さんだからサービスしちゃいました。売りに出そうかなとしているときに連絡があったんで、まだ金額決めてなかったんです。」
数珠「リケ男さんリケ子さん。金額は変わらないのでご安心ください。小人さん。境界線ってどうなっているんでしたっけ?」
小人「境界線も私たちの方でブロック積ませてもらうので、あとはお好きなフェンスを取り付けてください。」
数珠「こんなおいしい話無いですよ。良かったですねっ!!!」
境界のブロックはどうやら隣と共有になっているようだ。これだとブロックに何かあった時に面倒だ。本当に共有でよかったと思っている人はいるのだろうか。
雑談タイムもほどほどに小人不動産を後にすることに。ここまでの間、チンピラは一言も話さなかった・・・。一体何者なのだろうか・・・?
ひとまず何とか土地の契約を交わし、あの土地を入手する権利を手に入れた。後は住宅ローンで代金を支払えば、リケ男とリケ子のものになる。もう他の誰にも邪魔されることはない!!!
土地の件はこれでひと段落。数珠と会うのも、次は土地代金支払いの時のみ。これで家の事をじっくり考えることができるようになる。何となくヘーベルハウスで契約してしまったが、もっとじっくりヘーベルハウスの事について知りたくなったリケ男とリケ子は東京・埼玉近辺のヘーベルハウス展示場を見て回ることにした。