キッチンに不満があるリケ子
ヘーベルハウスのモデルハウスに到着するとそこには電卓店長とさわやか営業マンが出迎えてくれた。2対2の熱い戦いが始まろうとしている。
モデルハウスに通されると、早速新しい図面が提示される。
リケ男・リケ子(じろじろ・・・)
新しい間取りの詳細を電卓店長は説明している。前回の図面とはガラッとキッチンの位置が変わっている。南側をむいたキッチンは、光を取り込めそうな明るいキッチンになっていた。
それを見たリケ子は何か言いたそうだ。
リケ子「あ、キッチンってヘーベルハウスオリジナルのマルチアイランドキッチンに出来たりしますか?」
電卓店長「アイランドですか・・・高いですよ!!」
通常のカウンターキッチンと比べてプラス40万・・・しかし、アイランドキッチンは共働きにピッタリのキッチンという情報を “パルコン”の情報誌から知識を得ていたリケ子は全く引く気配がない。
なぜピッタリなのかというと、作業台スペースが普通のキッチンと比べると2倍以上ある。そこで食材のカットをしつつコンロを使う人と、シンクで洗い物をする人に分けてもキッチン周りは混雑しない。
さらに、作業台を取り囲んで一緒に作業することだって簡単にできる。将来子どもができたとしても、作業スペースにはまだまだ余裕がある。マルチアイランドキッチンならではの周りををぐるっと取り囲める利点だ。
さらに、一緒にご飯を作ることによってキッチンが家族のコミュニケーションを行う場として活躍する。仕事もバリバリしながら、家族とで協力しながら楽しく毎日を過ごせる。
日経ウーマン(雑誌)をこよなく愛するリケ子があこがれる毎日がマルチアイランドキッチンによって可能になる(らしい)。
ちなみに、後日計算して判明したことだが、通常のキッチンに食器棚を追加した状態と比べる必要がある。なぜなら、マルチアイランドキッチンはシンクとその後ろにガスコンロを設置するようになっている。ガスコンロ周りの食器棚もプランに含まれているため、カウンターキッチンだけと比べてはいけないのだ。
実際の差額は約プラス14万。これでも高いことに違いはない・・・。
電卓店長が奥の手を出してくる
金額が高くなるという事で表情が曇ったリケ男とリケ子の様子を見たさわやか営業マンと電卓店長は「ヘーベルハウス 45周年記念ファイナルキャンペーン」という紙を私たちの前に出してきた。
なんと、その内容は屋上と床暖房を無料にするというキャンペーンだった。
バス見学会の時に聞いた気がしなくもないが、2017年はヘーベルハウスの45周年の記念の年。どうやらさわやか営業マンと電卓店長が所属している支店では、45周年にあたる2017年は営業成績がよかったとのことだった。その日は12月2日で月初めの土曜日。最後の砦となる12月の1か月間もこのまま走り抜けるべく、12月のスタートダッシュにご協力いただきたい!そんな説明を受けた。
電卓店長「私たちどもも一年の最後までよい勢いで駆け抜けたいと思っておりまして。やっぱり月初めにご契約を頂くとその後も勢いづくんです。私たちのこの勢いのためにと勝手を申し上げている部分はあると思うので、支店で12月の1組目として契約いただいたお客様にサービスを付けているんです。」
「勢い」や「駆け抜けたい」など何とも抽象的な、文系(偏見)説明でイマイチ理解ができなかったが、サービス自体は凄まじかった。ヘーベルハウスはあまり値引きをしないという噂をネットでも度々見かけていたが、そんな事はなかった。
金額的にはかなりお得になりそうだった。リケ男とリケ子の満足そうな様子を見ながら、さわやか営業マンは図面にマルチアイランドキッチンの画を赤ペンで追加した。するとまた問題発生。
キッチンのスペースが狭いため、マルチアイランドなのにぐるっと回ることができない・・・。これではあまり意味がない。リケ子も呆然としている。一気に間取りに興味を失っているリケ子を見たさわやか営業マンは慌てた様子でペンを再びとった。
さわやか営業マン(鋼メンタル)「ちょっとお値段は上がっちゃうんですが・・・こんな感じでキッチンのスペースを広げてもよろしいかと。そうすればリケ子さんのご希望通りマルチアイランドキッチンをご家族で囲めますね。」
リケ子は眉間にしわを寄せながら間取りをじーっと見ている。そんなリケ子をさわやか営業マンと電卓店長は緊張の面持ちで見ている。そしてリケ子が口を開いた。
リケ子「・・・どうしよう・・・」
さわやか営業マン「えっ・・・ダメですか・・・」
リケ子「この間取りいいかも・・・。」
さわやか営業マン「あーーーーーーーーーよかった・・・!」
四人で和気あいあいと間取りを見ながら希望について話していると突然、打ち合わせの部屋のドアが開いた。今日もタートルネック。そう、数珠が現れた。そういえば、この展示場に着いた時に、さわやか営業マンからヤツも現れる事は聞いていたが、間取りを見るのに夢中で全くそんなことは忘れていた。
ヤツの顔なんか見たくなかった。間取りを見てわくわくしていたのに気分が台無しだ。そんな事はお構いなしに数珠は口を開く。
数珠「あーどうもどうも!リケ男さんとリケ子が気に入っているあの土地なんですけれどっ、向こうの不動産屋さんから今日中に返事が欲しいって言われちゃいましてー!!!まぁ、あの通り良い土地ですし、早めに他の展示場にも情報をバラまきたいみたいなんですよね!えぇ!それでどうですか??」
さわやか営業マン「今ちょうど間取りのご説明をしているところでして・・・。」
いつも笑顔のさわやか営業マンと電卓店長だが、“うるせぇな、空気読めよ”的な様子が出ていた。そんな様子にも気づく事なく、数珠は話を続ける。
数珠「先日申し込みをされているかと思いますので、まぁこのまま買っていただけるのであれば大丈夫ですけれど。もし買わないとなった場合には、不動産屋にお断りを入れる形になるんですね!そうすると土地を買うつもりもないのに申し込みだけした人としてレッテルを貼られてしまう事になっちゃうんで。不動産屋って横のつながりが結構ある業界なので!!どこの土地も買えなくなっちゃいますから!!そこ気を付けてくださいね!!」
リケ男・リケ子(・・・睨)
どうやら他のお客さんとの約束があるらしく、それだけ言うと数珠は部屋から出て行った。何をしにヤツはやってきたのだろうか。・・・というか買わないなんて、いつ誰が言った・・・?
数珠が来る前に希望の間取りを電卓店長とさわやか営業マンと4人で話していたが、いつの間にか設計士にまでその希望が伝わっていたようで、ものの1時間程度で新しい間取りが出来ていた。ヘーベルハウスの本気は凄かった。数珠へのイライラは一度封じ込め、もう一度間取りに目を通すリケ男とリケ子。希望はきちんと叶えられていて、申し分はなかった。
リケ子「すみません、間取りもじっくり見てどうするか決めたいので、一度二人にしてもらってもいいですか?」
さわやか営業マンと電卓店長が席を外したところで、早速リケ子が口を開いた。
リケ子「やっぱりさ、ブランド力って大事よね。ブランド力ってそれなりの実績がないと築けないと思うの。例えばさ、“旅行でどこのホテル泊まったの?”って聞かれて、“リッツカールトン”っていうとすごいなーってなるじゃん。それと同じで“どこの家住んでるの?”ってなった時に、レスコハウスっていうよりも“ヘーベルハウス”って言った方が“良い家に住んでるんだね”ってなると思うんだよねー。そう考えるとやっぱりヘーベルハウスかなー。一生住む家だし、やっぱりブランドものに住みたいよね!!!」
リケ男(出た出た。ブランド大好き女。あれだけオバちゃんの事大好きだったのに、コロッと乗り換えやがったな。・・・てかこの前までハウスメーカーの有名どころは“土屋ホーム”とか言っていたのはどこの誰だっけ・・・??)
ただリケ子の目はいつになく輝いている。こんな目の輝きは、例えにも出てきた、リケ子が最も好きなホテルであるリッツカールトンに泊まった時以来だ。一生住む家だ。前提として構造体も丈夫で間取りも希望が叶えられそうであれば、そんな憧れのような感情を決め手にするのも悪くないのかもしれない。
リケ男「・・・そうだね。」
ブランド大好き女・リケ子のブランド好きにより私たちはヘーベルハウスで家を建てる事を決めた。建てる事は決めたが、価格はまだ決まっていない。これからが勝負だ。