バス見学会は早朝に集合
バス見学会の朝は早い。
いつもならばまだ夢の中だが、この日は既に集合場所の展示場にいた。
集合時間よりだいぶ早く来てしまったせいか、まだ誰もいない。車から降りて展示場内を散歩していると、遠くの方から「ヘーベルハウス御一行様」と書かれた観光バスがやってきた。
集合場所に戻ると私たち以外にも沢山のお客さんがいた。どうやら周辺のいくつかの展示場からお客さんをここに集めて、見学会を実施しているようだ。多くは子供連れの家族や若い夫婦。変な人がいなくて一安心!
バスは支店長と保育士さんを乗せると、ずらっと並んだ営業マンたちに見送られ出発した。バス見学会では、工事中の現場、新築のお宅、そして築25年くらいのお宅の3か所に向かうようで、まず初めに工事中の現場へと向かった。
走行中、バスガイド役を務めるのは支店長。彼は特に外壁のヘーベル板の話が大好きなようで、目に付いた建物の外壁を次々と言い当てた。
支店長「・・・あ、あれがヘーベル板ですね。」
支店長「あ、あちらはALC板・・・」
支店長「こちらはサイディングですね。よく見ると端が浮いてきてますねー。」
・・・どうやらサイディングはあまりお好みではない事が伝わってくる。
説明はかなりの頻度でカミカミ。今日は舌の調子が悪いと言い訳しつつも、お客さんを飽きさせることなく最初の目的地に到着した。
工事現場で火事に強いことをアピール
最初は工事中の現場。
現場に入る入り口の横には、サイディング、タイル、そしてヘーベル板で作られた外壁のサンプルがあって、それらをバーナーで炙った時にどうなるのか再現する実験が行われようとしていた。
つまり火事が起こった時にどの外壁が強いのか確認できるという事だ。現場に入る前に火をつけるため、現場をすべて見終わった後でどうなってるか確認できる流れになっていた。
また1階には臨時の保育所が開設されていた。小さな子供も多かったため、親が構造の説明を聞いている間は1階で保育士さんと遊ぶ事が出来るようだった。おもちゃの中にはヘーベルハウスの羊(ラム君)もいた。この羊、なかなか可愛い。
支店長や現場にいた営業マンに言われるがままに、2階に上がるとそこには椅子がずらっと並べられていた。プロジェクターを用いて、じっくりと構造について説明が受けられるようだった。説明をするのは、設計課の偉い人(部長?)。バスガイドが支店長だったり、説明も部長だったりと、ヒラ社員ではないところにバス見学会の本気度が感じられた。
11月も終わりに近づいていたその日はかなり冷え込んでいた。パイプ椅子もかなり冷たい。そんな時に配れたのが「ネオマフォーム」だった。ネオマフォームとは旭化成が開発した断熱材で、ヘーベルハウスにはたっぷり使われている。ネオマフォームを座布団代わりに使って椅子に腰かける。お尻が徐々に暖まってきた。この断熱材、すごい・・・。
断熱材に感動したのも束の間、構造の話はどんどん進む。ネオマフォームに続いて渡されたのは、ヘーベル板とヘーベル板の間を埋めているコーキング材と、一般的に使われているコーキング材。ヘーベルハウス用はピンク色なのが特徴。このコーキング材は30年間もつように開発されたものとのこと。
一般的に使われているコーキング材を引っ張るとすぐに千切れてしまう。一方でヘーベルハウスに使われるピンク色のコーキング材は全然大丈夫。地震で建物が揺れた時にコーキング材が切れ、そこから雨水が入ったりする事があるようだが、ヘーベルハウスに使われているものは強度が高く、そんな心配はいらなさそう。
最後に見せられたのは、耐震実験の動画。手前にはヘーベルハウス自慢の制震フレーム「ハイパワードクロス」が設置された柱が、奥には一般的な柱。・・・この柱、先週見た気がする。積水ハウスの柱ではないか!!
何度も強烈な地震の揺れを受ける両者。
ハイパワードクロス中心にある極低降伏点鋼が地震エネルギーを吸収し続ける中、一般的な柱に異変が・・・!
「シーカス」と共に取り付けられている筋交い(ブレース)が伸びてしまって、地震の揺れを抑えることが出来なくなっているではないか!!無残な姿になった筋交いは、伸びきっていて交換する必要がありそうだ。
くたっとなった柱の前で、ヘーベルハウスの柱は元通りにそびえ立っている。
地震に強いというアピールを続ける部長の姿は、はったりではなく根拠に基づいた自信があふれだし私たちの心をわしづかみにした。
リケ子「ヘーベルハウスって本当にすごいんだね!」
リケ男「だろッ!(ドヤ顔)」
だが、シーカスの付いた筋交いが本当に伸びるのだろうか?
似たような構造にしてミスリーディングさせようとしているのではないか。疑い深いリケ男は、帰宅後に積水ハウスの情報を入念に調査した。
すると、シーカスの実験動画を発見!
大きな揺れと共に筋交いが伸びているのが確認できた。サーモグラフィー画像はシーカスが振動を吸収して発熱していることを示そうとしているが、筋交いも発熱していることがわかる。これは金属が変形するときに発熱したものと考えられるので説明がつきそうだ。
工事現場で実際の柱を見学した後、入り口まで戻ってきた。するとそこには燃やされた3種類の外壁が。サイディングとタイルの外壁は丸焦げ。ところが、ヘーベル板は焦げはなく、ヘーベル板も手で触れる事が出来る。たとえ放火の被害に合ったとしても、
ノーダメージ。
ヘーベル板、すごい。
新築の家はペントハウス付き
ヘーベルハウスの技術力を目の当たりした現場を後にし、次の目的地・新築のお宅へと向かった。新築のお宅は2階建てのペントハウス。ヘーベルハウスらしい真っ白な外壁のお家だった。
リケ男心の声(構造は強いかもしれないけど、中はどこも変わらないでしょ。)
中に入ると寝室や子ども部屋のみ。まさか、LDK作り忘れたのか??誘導されるがまま2階へ向かうと、そこにはとても明るい空間が広がっていた。そう、一般的な家は1階にLDKがあるがこの家は2階にLDKがあったのだ。2階にLDKを作ることにより、1日中明るい空間で過ごすことができるようになっていた。
夕方になると暗くなるリビングが普通だと思っていたリケ男は、2階リビングというヘーベルハウスの提案に驚嘆し、ますますヘーベルハウスのとりこになっていた。
施主インタビューでは、バスガイド(支店長)が色々とヘーベルハウスに有利な質問を投げかけ、模範回答と思われる回答が返ってくる。
その中で施主がぽろっと次のように言った。
新築施主「妻は元設計士で・・・エアコンとかベランダにこだわりがあります」
なにっ?設計士だと!?設計士なら自分で設計して建てることができるはず。なのにこの方たちはそれをしていない?まさか、元ヘーベルハウス社員??こんなところにもトラップが仕掛けられているのか!!
リケ男心の声(まさか、この建物・・・バス見学会専用に建てているのか!? 施主役は朝集合して、インタビュー後に帰ることだって出来る。本当にこの人たちの話を信用していいのだろうか・・・?)
この家は、家事動線を重視して設計されたとの事で洗濯機、キッチン、ベランダをくるくる回れるような動線が確保された間取りになっていた。
キッチンを眺めていたら施主が話しかけてきた。
新築施主「このキッチン。ヘーベルハウスオリジナルキッチンなんですよ。シンクの下にゴミ箱を置けるのが便利なんですよ。」
さらに施主は説明を続ける。
新築施主「このパントリー見てください。ラップいっぱいあるでしょ~(笑)ヘーベルハウスで家を建てると貰えますよ!(ドヤ顔)」
パントリーにぎっしり詰まった旭化成サランラップを自慢げに紹介施主の顔は今でも忘れられない・・・。正直、ラップの事なんてどうでもいいのだが、この時初めて食材保管庫をパントリーと呼ぶことを知った。
この建物には屋上があり、周りの建物もほとんどが2階建て。屋上からの眺めは素晴らしい。この家を見た私たちは、家を建てるなら2階リビング・屋上ありの家に住みたいと思い始めた。
ヘーベルジジイ現る
新築の家を後にした私たちは、最後の物件である築25年の家へ向かった。
そこに現れたのは、きれいにメンテナンスされた3階建てのヘーベルハウスだった。中に入ると時代を感じるデザインではあるがきれいに使われていることが分かる。新築の時と同様にバスガイドは施主にインタビューを始めた。
答えるのは60歳を過ぎているであろうおじさん。話を聞いていると、おじさんのヘーベル愛がひしひしと感じられた。ここでは尊敬の意を込めてヘーベルジジイと名付ける。
会話の中で特に印象に残った話があった。
ヘーベルジジイ「地震が来ると皆さんは外に逃げるでしょ?でもヘーベルハウスは地震でも大丈夫だから、いつも家具を家内と一緒に押さえるようにしていたんです。2011年3月11日の時も、いつもの時と同じように家具を押さえていたら、揺れがどんどん大きくなってきて押さえるのが大変だったんです。
揺れが収まると近所の人たちがみんな外に避難していて、私たちにも危ないから外に出てと声を掛けてくれたんですよ。でも、私のヘーベルハウスはびくともしていない。外に逃げる必要なんてないんです。ヘーベルハウスを建ててよかったと思った瞬間です。」
確かに、壁紙も割れていなく、建物が受けたと思われる傷跡はどこにもない。しかもこの25年間内装のリフォームも一切していないとのこと。
ヘーベルジジイ「あとね、この家の3階から眺める川の景色が好きで、本当に3階建てにしてよかった。」
ヘーベルジジイは自慢のヘーベルハウスについて長々と話し始め、バスガイド(支店長)ですら抑えることが困難に・・・
きりのいいところで、見学タイムとなった。1階は日当たりがあまりよくなく底冷えしていた。だが、この家には小上がりの畳コーナーに掘りごたつがある。そこで過ごせば底冷えなんて関係ないのだろう。
そのままキッチンへ行くと、施主の奥様が収納について教えてくれた。
ヘーベルジジイの奥様「このパントリー・・・」
!?そんな昔からパントリーという言葉が使われていたのか!?実家にはそんなもの存在しなかったのに・・・。パントリーの中はきれいに整理されていて、パントリーも愛用されていることがうかがえた。
3階へ向かうとヘーベルジジイご自慢の風景が広がっていた。確かに春になると桜が咲いてきれいだろう。自慢したくなるのもわかる気がする。
家を出る時に外壁をよく見ると、かなりきれいな状態になっていた。どうやら最近外壁工事を行ったようだ。昔のヘーベルハウスの外壁保証期間は今よりも短いもので、定期的なメンテナンスが必要だった。
しかし、最新のヘーベルハウスは30年間初期保証してくれる。技術の進歩により保証期間を長くすることに成功したとの事。新築時の家の価格が安くても、メンテナンスが必要になった場合にはメンテナンスの都度、数百万必要になるのだ。このことも考慮に入れてハウスメーカーを選定する必要があるだろう。
ヘーベルジジイのお宅は出発地の展示場からは少し離れた所にあり、展示場まではバスで1時間近くかかるようだ。そろそろお昼時。お腹も空いたなーと思っていると、バスに乗っていた営業マンと保育士が両手に丁度乗るくらいのサイズの白い箱を配り始めた。
どうやらお昼ごはん。温かい飲み物も一緒に配られた。さすがヘーベルハウス、余念がない。
前に座っていた年配の夫婦が配られたばかりの白い箱を見て一言。
年配妻「ねえ、お父さん、今日は何サンドイッチかしらね~」
白い箱は配られたばかりで、本人たちも周りの誰も一切白い箱を開けていない。・・・なのにどうして中身がサンドイッチだと分かるのだろうか。しかも今日は何サンドイッチかって・・・。
きっとバス見学会の常連なのだろう。そういえばこの夫婦全然家自体には興味がなさそうだった。結婚式場のブライダルフェアに行くのが趣味になっちゃった★という人は聞いた事があるが、バス見学会にもそのような人種が存在するなんて・・・。
世の中色々な人がいるなーと思いながらサンドイッチを頬張っていると、バスガイド(支店長)の熱血演説が再び開始された。ただ今回はフィナーレらしく、大好きな外壁についてではなく、旭化成という会社についてだった。
旭化成は人々の「いのち」と「くらし」を大切にしていること。2011年3月11日に起こった東日本大震災の時には、ヘーベルハウスはすべての営業活動を中止し、まず被災地に住む方々の安否を確認しにいったこと。
通常就活中の大学生が見る会社紹介用の動画が流れ、リケ子(いい話大好き)はかなり心わしづかみの様子。ヘーベルハウスそのものだけではなく、母体の会社まで好きにさせる作戦。バス見学会のフィナーレとしては完璧な流れだ(上から目線)。
そうこうしているうちにバスは展示場に戻ってきた。目的の見学も終わったし帰るか!と思っていたが、そうはいかなかった。満面の笑みの担当営業マンにより捕獲され、リケ男とリケ子は展示場の中へ吸い込まれていった。